Finding 13 — AI推薦の構造

値段や品質を競合商品と競っても、
AIの1位にはならない。

AIがいちばんよく名前を挙げるブランドは、各社がそろって力を入れている条件では目立っていません。1位の決め手は、たいてい別のところにあります。

本稿は、AI推薦計測エンジン CWO による50を超えるカテゴリの継続観測のうち、繰り返し確認された構造を、業種(クラス)レベルの振り返りとして整理したものです。
I

どの業種にも、「みんなが競っている条件」があります。

AEO総研は、独自のAI推薦計測エンジン CWO(Context Window Overview)で、日本市場の50を超えるカテゴリを継続観測しています。AIが「何を・なぜ・どの引用元を根拠に」推薦するかを月次で記録するなかで、業種ごとに、各社の訴求が集中する条件がはっきり見えます。

店頭で買う商品なら味や使い心地、通信のように契約して使い続けるサービスなら料金、金融まわりのサービスなら還元率や手数料。中身は業種ごとに違いますが、どの業種にも必ず一つ、各社が集中して競い合っている条件があります。以下、これを「みんなが競っている条件」と呼びます。各社の説明にも、AIが推薦の理由として挙げる言葉にも、最も多く登場する条件です。

この条件で競合商品に勝てば、AIにも選ばれる。多くの企業がそう考えます。しかし観測されるのは、そうなっていない、という事実です。

II

ところが、AIが1位に挙げるブランドは、その条件で目立っていません。

カテゴリごとに、AIがいちばんよく名前を挙げるブランドを特定し、そのブランドが「なぜ推されているのか」の理由を調べると、共通した傾向が現れます。1位のブランドは、みんなが競っている条件では、他社より際立っていません。その条件については平均的か、あるいはまったく特徴がないこともあります。

これは直感に反します。最も競争の激しい条件で最も強いから1位なのだ、と考えるのが自然だからです。しかし実際には、1位のブランドは、その条件を勝ち抜いて1位になっているわけではありませんでした。1位のブランドは、いちばん競争の激しいところでは戦っていない——これが、業種をまたいで繰り返し現れる形です。

III

では、どこで勝っているのか。2つの型があります。

1位の勝ち方は、大きく2つに分かれます。どちらになるかは、その業種の構造で決まります。

  • 型1:別の土俵で勝つ/みんなが競っている条件ではなく、その外側にある理由で選ばれる
  • 型2:とくに売りはないが、誰もが知っていて手に入る/際立った強みがないまま1位になっている

型1では、信頼や実績、グループ全体の経済圏、買いやすさ・手に入れやすさ、特定の使い方との相性——業種によって中身は変わりますが、共通するのは「各社が集中している場所を避けたところに勝因がある」点です。金融まわりのサービスでは信頼や経済圏が、店頭で買う商品では価格の安さと手に入れやすさが、この位置に来ることが多く観測されます。

型2では、みんなが競っている条件について各社が横並びで、そのブランドだけが優れているわけではありません。それでも、広く知られていて、どこでも手に入る。この「行き渡っていること」そのものが勝因になります。同じような商品が並ぶ業種、長く売られてきた定番商品のある業種で、多く見られます。

型2は、対策を考えるうえで厄介な発見です。1位を分析しても、真似すべき強みが出てこないからです。「1位がやっていることを研究する」というやり方が、そもそも成立しない業種があるということになります。

IV

みんなが競っている条件にいるのは、後発・中堅のブランドです。

では、その条件は誰の場所なのか。観測すると、そこに集中しているのは後発や中堅のブランドでした。高機能をうたう商品、特定の分野に特化した新しいサービス——競争の激しい条件で明確に強みを主張しているのは、1位ではなく、追う側です。

順序が逆だということです。みんなが競っている条件で勝ったから1位になったのではなく、1位がそこにいないから、そこが競争の場になっている。追う側は、1位が空けている場所ではなく、追う側同士がひしめいている場所で競い合っていることになります。

この構造は、AIが商品を薦める理由には業種ごとに決まった評価軸があるという以前の整理と、AIに推される企業は規模でも知名度でも検索順位でもないという整理の、続きにあたります。評価軸が業種ごとに違うだけでなく、その軸の上でブランドがどこに位置しているかまで含めて、構造があるということです。

V

ただし、例外があります。

この形は、すべての業種に当てはまるわけではありません。観測のなかで、成立しないカテゴリが確認されています。例外は2つの条件で起こります。

第一に、どの会社も避けられない弱点が、その業種の焦点になっている場合です。たとえば、トラブルが起きたときの対応の速さのように、事業の仕組み上どの会社にもついて回る弱点があると、1位もそこから逃げられません。別の土俵に移ることができないため、1位もその条件の中で評価されます。

第二に、1位と2位がほぼ並んでいる場合です。そもそも明確な1位が存在しない拮抗した業種では、この構造は現れません。

この2つの例外があるということは、裏を返せば、自社の業種がどちらなのかを先に確かめる必要があるということです。別の土俵を探すべき業種なのか、それとも全員が同じ土俵から出られない業種なのか。ここを取り違えると、打ち手の方向がそのまま逆になります。

VI

出発点は、自社の業種の構造を知ることです。

まとめると、AIの推薦において「競合商品より良いものを、競合商品と同じ条件で訴える」ことは、1位への道筋にはなりにくい、ということになります。その条件は、多くの業種で、追う側がひしめく場所だからです。

先に確かめるべきことは3つです。

  • 自社の業種で、みんなが競っている条件は何か
  • 1位はどこで勝っているのか(別の土俵か、それとも行き渡っていることそのものか)
  • 自社の業種が例外にあたらないか

この3つが分かってはじめて、自社がどこで勝負すべきかが決まります。AI推薦の構造は、市場の成熟とともに動きます。後から振り返って再現することはできません。早く、継続して観測することの静かな価値は、ここにあります。

First Step

自社の業種で、AIはいま誰を、なぜ1位に挙げているでしょうか。

その問いから始まる無料の診断ツール「CWO Site Audit」を公開しています。観測から始まる、というだけのものです。

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本稿は、AI推薦計測エンジン CWO を用いた50を超えるカテゴリの継続観測のうち、繰り返し確認された構造を、業種(クラス)単位で、振り返りとして整理したものです。個別ブランドの順位、自社の月次の観測値、評価の規則、分析の具体的な手法には立ち入っていません。

本稿で述べた構造には、第V章に記したとおり例外となる業種が確認されています。すべての業種に一律に当てはまるものとしてではなく、自社の業種がどちらにあたるかを確かめる出発点としてお読みください。