AEO総研 — Findings · General

AIに推される回数は増えた。それでも、評価は上がりきらない

AIに推されるために、多くの企業が自社の強みを磨きます。一部はそれに成功し、AIが自社を挙げる回数は、確かに増える。ところが、推薦は増えたのに、評価そのものは上がりきらない——強みをさらに伸ばしても、その引っかかりは消えません。50を超えるカテゴリを月次で観測してきた結論を、ひとことで言えば、AIが推す理由と、評価を下げる理由は、別の物差しで動いている、ということです。

本稿は、私たち(AEO総研)が50を超えるカテゴリで続けてきた継続観測をもとに、AIが企業を「推す理由」と「評価を下げる理由」の関係を、振り返り(retrospective)として、業種・クラスのレベルで整理したものです。個別企業の評価、月次の観測値、スコアリングの手法、引用元の評価規則には立ち入っていません。

I

勝因と負因は、別の軸に立っています。

まず、ひとつの思い込みを外す必要があります。「良いところを伸ばせば、悪い評価も自然に相殺される」という前提です。観測上、これは成り立ちません。選ばれる理由(勝因)と、外される理由(負因)は、同じカテゴリの中でも、別の軸に立っているからです。

たとえば、料金の安さで繰り返し推薦されるサービスがあるとします。同じAIが、その同じサービスを「申し込み手続きが煩雑だ」「対応プロセスが不透明だ」と減点する。勝因は料金、負因は手続き体験——まったく別の軸です。逆の組み合わせもあります。高い品質で評価される商品が、まさにその価格の高さを理由に減点される。ここでは料金が、勝因ではなく負因の側に回っています。

同じ「料金」という軸が、ある業種では選ばれる理由になり、別の業種では減点の理由になる。だから、勝因をどれだけ磨いても、負因の軸そのものには手が届きません。推薦が増えても引っかかりが残るのは、初めから両者が別の場所にあるからです。

II

推されている、だけでは安心できません。

ここで多くの企業が見落とすのが、「推されている=安全」という早合点です。負因は、知名度の低い企業だけが抱える問題ではありません。AIに繰り返し名前を挙げられる上位ブランドであっても、特定の軸では、一貫して評価を下げられています。推薦と減点は、同じブランドの中に併存する——勝者だからといって、負因を免れているわけではないのです。

規模も、検索順位も、知名度も、この減点を帳消しにはしてくれません。むしろ、上位にいるブランドほど露出が多く、減点の言及もまた拾われやすい。「うちはAIによく出てくるから問題ない」という読みは、評価の片面しか見ていない判断です。

III

負因は、あらかじめ読めます。

では、この負因は、ブランドごとのばらばらな偶然なのでしょうか。観測の結論は、逆です。どの軸で減点されるかは、ブランドの個性というより、カテゴリの構造に根ざしています。料金で競う業種では手続きや対応プロセスが、品質で競う業種では価格や入手性が——というように、負因の立つ場所は、カテゴリごとに、おおむね決まっています。

だからこそ、その軸は、月をまたいでも安定して現れます。これは実務上、決定的な意味を持ちます。負因は、損をしてから事後的に気づくものではなく、あらかじめ読めるもの——観測を続けるほど、自社がどの軸で減点されやすいかが、輪郭を持って見えてきます。

IV

なぜ、多くの計測がこれを見落とすのか。

それほど構造的なものなら、なぜ、多くの計測はこれを見落とすのでしょうか。理由は二つあります。

第一に、評価の根拠となる引用元・参照元は、推薦の根拠とは別系統から立ち上がります。AIが「推す」ときに参照する場所と、「評価を下げる」ときに参照する場所は、必ずしも一致しない。推薦を生む引用元を整えても、評価を左右する引用元は、そこにはない——だから、推薦対策の手応えと、評価の改善は、しばしば噛み合いません。

第二に、多くの計測は、自社の評価を「ポジティブか、ネガティブか」という一つの値に畳んでしまいます。その瞬間、どの軸で減点されているか、という最も肝心な情報が消える。総合点が中の上であっても、特定の軸で深く減点されている事実は、平均の中に埋もれてしまう。負因は、評価を軸に分解し、その根拠となった引用元まで遡って、初めて輪郭を現します。

V

非対称には、非対称で応じます。

ここまで来れば、打ち手の形は決まります。非対称な問題には、非対称に応じるしかない——勝因を伸ばす施策と、負因を抑える施策は、別々に立てる必要があります。

やっかいなのは、強みを伸ばす行為が、負因をむしろ増幅させる場合があることです。たとえば、高価格帯へ舵を切れば、品質という勝因は強まる。しかし同時に、価格という負因も育ってしまう。強みに賭けるほど、その裏側で減点が膨らんでいく——この罠に気づかないまま「強みをさらに磨く」を続けると、伸ばしたはずの強みごと、減点に飲まれかねません。

避ける道は、一つです。まず、自社の負因がどの軸に立っているかを、勝因とは切り離して特定する。そのうえで、勝因の強化とは別の打ち手を、別の引用元に向けて講じる。順序と対象を取り違えないこと——それが、推薦の数と、評価の質を、同時に動かす条件になります。

AIに「なぜ推され、なぜ減点されるのか」。この二つは、別の物差しで決まります。加点だけを見ていては、自社の現在地は、半分しか分かりません。AEO総研は、その両面を、推測ではなく、カテゴリ単位の継続観測から読み解くことを、役割としています。

First Step

自社は、AIに何で推され、何で減点されているでしょうか。

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本稿は、AIの推薦と評価の非対称を、業種・クラスのレベルで、振り返りとして整理したものです。個別企業の評価、月次の観測値、スコアリングの手法、引用元の評価規則には立ち入っていません。