本稿は、私たち(AEO総研™)がAI推薦計測エンジン CWO を用いて、50を超えるカテゴリで続けている観測——AIが「何を・なぜ・どの引用元を根拠に」推薦するかの月次計測——のうち、BtoB SaaS分野で繰り返し確認された知見を、振り返り(retrospective)として、分野(クラス)単位で整理したものです。個別ブランドの順位や、自社の観測値・評価規則・手法には立ち入っていません。引用した第三者の数値は、末尾に出典を明記しています。
BtoBの発注先選びでも、AIが「最初の一手」に入り始めました。
50を超えるカテゴリを観測してきたなかでも、BtoBの発注先探しは、この1〜2年で大きく動いた領域です。株式会社Pifteeが2026年5〜6月に、過去1年以内にBtoBの発注先・外注先の選定に関わった担当者196名へ行った調査では、発注先の選定で生成AI検索を使った経験がある人が75.0%にのぼりました。発注先探しの「最初の一手」に限っても、生成AI検索は約10%で第4位に入り、比較サイトやSNSを上回っています。
見落とせないのは、その先です。同じ調査で、AI検索を使った人の82.3%が「それまで知らなかった企業やサービスを、AIを通じて新しく知った」と答えています。AIは、すでに知られた候補を並べ替えるだけでなく、候補そのものを生み出す入口になり始めている、ということです。AIの回答に自社が現れるかどうかが、検討の候補に残れるかどうかを、静かに左右し始めています。
ここで効くのは、公式サイトの充実度ではありません。
多くの担当者は、ここで「自社サイトを充実させよう」と考えます。しかし、AIが推薦の根拠として実際に引く引用元は、多くのBtoB SaaSの分野で、自社の公式サイトよりも、第三者の比較・解説メディアや、導入を支える事業者(販売代理・システム構築の事業者など)経由の情報に偏ります。CWOの継続観測でも、公式の製品ページが推薦の引用元として登場する比重は、分野を問わず小さい、という傾向が繰り返し確認されています。
これは直感に反します。「自社のことは自社が一番正しく書ける」のは事実です。しかし、AIが「第三者の視点で書かれた情報」を、より参照しやすい引用元として扱う限り、公式情報の整備だけでは、AIの推薦には届きにくい。公式サイトの充実は、必要ではあっても、十分条件ではありません。
同じ「SaaS」でも、業種で引用元の顔ぶれが入れ替わります。
さらに厄介なのは、「BtoB SaaS」とひとくくりにできない点です。AIが頼る引用元の型は、扱う業種(分野)ごとに、構造的に入れ替わります。ある分野では、第三者の比較・解説メディアが引用元の中心を担い、別の分野では、導入を支える事業者(パートナー)経由の情報が中心になります。打ち手の効きどころが、分野によって別の場所にある、ということです。
ブランドの知名度も、ここでは決め手になりません。海外発の有力なブランドでさえ、ある製品分野ではAIの引用元として現れ、別の分野ではほとんど現れない、ということが起こります。分かれ目は、知名度ではなく、その分野に日本語の解説・比較の情報がどれだけ蓄積しているか。同じ社名でも、扱う分野が変われば、AI回答での扱われ方が変わります。
だから、「これさえやれば」という万能のAEO施策は存在しません。
以上を踏まえると、よく語られる汎用の打ち手——とにかく公式を強化する、特定の比較サイトに載る、動画を増やす——が効くかどうかは、自社の業種次第だと分かります。ある分野で正解だった施策が、隣の分野では空振りになります。CWOの継続観測でも、すべての分野に等しく効く「万能の引用元」は、見つかっていません。
「AIに選ばれるための、たった一つの方法」を掲げる施策には、注意が要ります。引用元の構造が分野ごとに違う以上、最初に確かめるべきは、施策の良し悪しではなく、自社の業種で、いま実際に誰がAIの引用元になっているか、です。
出発点は、自社の業種で「誰が引用元か」を観測することです。
打ち手は、観測のあとにしか決まりません。自社の分野で、AIがどの引用元・参照元を根拠に、誰を、なぜ推しているのか。それを把握してはじめて、公式情報の整備に投資すべきか、第三者メディアでの露出を取りに行くべきか、パートナー経由の情報を整えるべきかが、分かれます。
そして、この引用元の構造は、市場の成熟とともに動きます。後から振り返って再現することはできません。早く・継続して観測することの静かな価値は、ここにあります。AEO総研は、この「日本市場のBtoB分野で、AIが何を根拠に推薦するか」を、中立の立場から継続して計測することを役割としています。
自社の業種で、AIはいま誰を引用元に推しているでしょうか。
その問いから始まる無料の診断ツール「CWO Site Audit」を公開しています。観測から始まる、というだけのものです。
Site Audit を試す →本稿は、BtoB SaaSにおけるAI推薦の引用元構造を、分野(クラス)単位で、振り返りとして整理したものです。個別ブランドの順位、自社の月次の観測値、引用元の評価規則、地図を読み解く具体的な手法には立ち入っていません。
- 株式会社Piftee「BtoB発注先選定におけるAI検索活用の実態調査2026」2026年6月公表(調査期間2026年5月22日〜6月5日、インターネット調査、有効回答196名)